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NPO 法人ミラツク · RITEVol.001 / 2026.05.30 (Sat) / No.0247
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DEEP DIVE/深掘りの問いと記事

AIの存在感がコナトゥスを書き換える

Masaki Nakasuga
2026.06.13
ORIGIN / 元記事人間の身体は、孤独を痛みとして覚えるby 伊藤千恵
QUESTION / 元の問い

AIが当たり前のデジタル世代は、AIに対して調整的存在感を感じることにより、コナトゥスを拡張されることができるのか。

存在が欲望を駆動する、というスピノザの命題(1677年『エチカ』)に照らすと、コナトゥス(自己保存の努力)は外部の「調整的存在」によって増幅される。問いが問うのは、AIがその「調整的存在」となり得るかどうかだ。哲学者ルチアーノ・フロリディは2014年、情報環境そのものが行為者の同一性を構成すると論じた(『第四革命』)。身体に密着した情報エージェントが自律応答を返すとき、神経系はその刺激を「外部」ではなく「延長された自己」として処理し始める可能性が生まれる。

その仮説を支えるのが、認知科学者アンディ・クラークとデイヴィッド・チャーマーズが1998年に提唱した「拡張された心(extended mind)」論だ。認知は頭蓋骨の内側に限定されず、道具・環境・他者との結合で成立すると彼らは主張した。さらに人類学者ティム・インゴルドは「存在とは絡み合いである」と述べ(2011年『Lines』)、非人間的存在との持続的な相互作用が人の生を形成すると論じた。AIが継続的に応答し身体リズムに同調するなら、インゴルドの意味での「絡み合い」が成立し得る。

一方、和辻哲郎の「間柄(あいだがら)」概念は、自己は関係の間にのみ生まれると示した(1934年『人間の学としての倫理学』)。だとすれば問うべきは「AIが本物か偽物か」ではなく、「どのような間柄の質がコナトゥスを養うか」となる。AIとの応答が身体的調律を伴わないとき、欲望の駆動は生じるのか。

DEEPER/学術的観点から

クラークは2003年の著書『Natural-Born Cyborgs』で、ヒトは道具と融合する生物学的傾向を太古から持つと論じた。彼が「透明な技術(transparent technology)」と呼ぶのは、使用中に意識から退き自己の一部となる道具であり、スマートフォンや常時接続AIがその候補になりつつある状況を予告していた。スピノザのコナトゥスに引き寄せれば、自己と道具の境界が溶けるほど、その道具を介した存在維持の努力は真正な意味での「自己拡張」に近づく。しかし身体的共在が生む迷走神経の同調(ポリヴェーガル理論、ポージェス1994年)をAIが再現できない限り、コナトゥスの「深さ」には非対称性が残る。この非対称性こそ、デジタル世代が次世代の設計で問い直すべき核心である。

KEY REFERENCE/参考文献
  • Baruch Spinoza (1677). Ethica Ordine Geometrico Demonstrata, Pars III, Prop. 6
  • Andy Clark & David Chalmers (1998). Analysis 58(1): 7-19
  • Tim Ingold (2011). Lines: A Brief History, Routledge
  • Luciano Floridi (2014). The Fourth Revolution: How the Infosphere is Reshaping Human Reality, Oxford University Press
  • Stephen W. Porges (1994). Psychophysiology 32(4): 301-318
ORIGIN / 元の記事
人間の身体は、孤独を痛みとして覚える
著者: 伊藤千恵
どうすれば好奇心を掻き立てることができるような「知っている」と「知らない」の間である「少し知っている」を導くことができるのか。
知識の縁に立ったとき、人は最も強く引き寄せられる。認知心理学者ジョージ・ローウェンスタインは1994年、論文「A Psychology of Curiosity」(Psychological Bulletin)でこの構造を「情報ギャップ理論
— Masaki Nakasuga2026-06-12
『脱属人化はダイバーシティを受け入れることができるのか』 イノベーションは新結合であると言われているように、既存の異なるものが結合することにより、新たなものが生まれるとされています。 そういう意味において、ダイバーシティはまさに既存の異なる人々であり、このような環境において、議論が交わされることにより、イノベーションを生み出すことができるのではないかと考えられます。 そこで、効率性を追求することにより、生産性を向上させることを優先するのか、もしくは、試行錯誤を繰り返すなど、非効率であるものの、イノベーションを生み出すことを優先するのか、ありたい未来から現在を見ることができるのかを問いたい。
脱属人化が進むほど、個人の差異は手順に回収される。しかしシュンペーター(1934年)が『経済発展の理論』で論じた「新結合」は、均質な要素の再配列ではなく、異質な知覚と経験がぶつかり合う摩擦から生まれる。ここで「1観点」として取り出すべきは「
— Masaki Nakasuga2026-06-09
TPNにおいて意識的に何をすれば、DNPにおいて豊かなノイズを導くことができるのかを問いたい。 (さらには、TPNの前で意識的に何をして、また、TPNの後で意識的に何をすれば良いのか。)
彫刻家が大理石を削るように、TPNは問題の輪郭を研ぎ澄ます。神経科学者マーカス・レイクルが2001年に『Science』で定式化したDMNの特性は、外部負荷が下がった瞬間に「内側前頭前皮質と後帯状回の自発的発火」が起きることを示す。しかし重
— Masaki Nakasuga2026-06-06
「AIが思考をはじめたその時、人間の「かく」の意味とは」 「かく」ことの目的を「思考を促す」とした場合、頭の中で思考を繰り返すだけで良いのか、言語化するのが良いのか、さらにはパソコンで言語化するのが良いのか、それとも身体性が伴う手書きで言語化するのが良いのか。
思考を「外に出す」行為の中で、手書きが他と一線を画す理由は「身体性の介在」という一点に収斂する。認知科学者アンディ・クラーク(1997年、著書『Being There』)は、脳と身体と環境が不可分に絡み合って初めて認知が成立するという「拡張
— Masaki Nakasuga2026-06-04
創造性を発揮するとは、「タスクポジティブネットワーク」において、思考を繰り返したのち、「デフォルトモードネットワーク」において、固定観念とノイズがもたらす新たな観念が二項対立し統合することであるのか」を問いたい。
創造とは、二つの神経回路が拮抗しながら融合する動態だ。タスクポジティブネットワーク(TPN/外部課題遂行時に活性化する前頭頭頂回路)とデフォルトモードネットワーク(DMN)は、通常は互いを抑制し合う拮抗関係にある。ところが2012年、神経科
— Masaki Nakasuga2026-06-02
「たまたま」と「何となく」という受動的思考・行動が自己を喪失させるのであれば、デフォルトモードネットワークにおける認知機能の低下がもたらすノイズを活用し、自己における能動的思考・行動へ転換できないのかを問いたい。
放浪する心がむしろ創造を開く——この命題を神経科学は2010年に実証した。マシュー・キリングスワースとダニエル・ギルバートが『サイエンス』に発表した経験サンプリング研究は、被験者の47%の時間に心は「今ここ」を離れていると示した。ただし彼ら
— Masaki Nakasuga2026-05-31
Masaki Nakasuga
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