- NO.00067 MINNEW公開 2026.06.04諦めることが難しくなっている
「できない」が消えた世界で、人は着地できなくなった
夜、スマートフォンの画面が静かに光っている。返信を待つメッセージ、未読の通知、明日に持ち越せるはずのタスク。「後でできる」という感覚が、いつの間にか「今やらない言い訳」に変わる。技術が時間と距離の壁を取り除いたことで、「できない」という言葉の居場所が消えた。あらゆる未完了は、もはや環境の問題ではなく、諦めた自分の問題として内側に降り積もる。その重さに気づいたとき、私たちはすでにずいぶん長い間、地面に足をつけないまま漂っていたことに気がつくのです。
- NO.00058 MINNEW公開 2026.06.04社会変化と身体変化の不整合と再統合
身体は、社会より三十万年古い
朝、目が覚める前から心拍数は上がっている。起床の一時間ほど前にコルチゾールが分泌され、身体は狩りに出る準備を整える。だが実際に始まるのは、画面を開いてメッセージを確認する作業だ。この小さなずれに、現代人の多くが感じる漠然とした疲弊の根がある。身体は三十万年前の朝を生きようとしており、社会は数十年ごとに別の朝を要求してくる。この不一致は、意志の弱さでも適応力の欠如でもない。進化的タイムスケールと社会的タイムスケールという、根本的に異なる二つの時間が、同一の身体の中で衝突しているという問題だ。
- NO.00047 MINNEW公開 2026.06.04都市と死者との関係
死者の場所が、都市の時間を支えている
東山を歩いていると、ふいに空気が変わる瞬間がある。大谷本廟の石段を上がるでもなく、ただ参道の脇を通り過ぎるだけで、足の裏に伝わる石畳の感触が少し重くなるような気がする。線香の煙が風に流れ、読経の声が遠くから届く。観光客の声もあれば、喪服の人の背中もある。生者と死者が、同じ道を共有している。東山沿いに廟や塔頭が連なるのは偶然ではない。鳥辺野と呼ばれたこの地は、平安の昔から遺体を鳥に委ねる葬送の野であり、都市と死者が長い時間をかけて結んできた関係の痕跡が、今も地形と地名に刻まれている。
- NO.00037 MINNEW公開 2026.06.04人との関係が構築されるとき
出会いは、相手をどう扱うかで決まっていた
初めて会う人の前に立つとき、身体は一瞬だけ静止する。おずおずと声をかけるか、元気よく挨拶するか、それとも表情を閉じたまま会釈だけで済ませるか。その選択は礼儀の問題ではない。自分のなかの気分の波と、相手の内側に広がっているはずの海とが、ほんの数秒のうちに交差する瞬間だ。その瞬間に何かが決まっているとしたら——関係の深さも、浅さも、続くかどうかも——わたしたちは出会いについて、まだほとんど何も知らないのかもしれない。
- NO.00028 MINNEW公開 2026.06.03つくられた西洋の創造性、立ち上がった東洋の創造性
創造性を高めようとするほど、創造は遠ざかっていく
陶芸家が轆轤を回しているとき、ある瞬間から「自分が器をつくっている」という感覚が消える。手が土を導いているのか、土が手を動かしているのか、もはや区別がつかない。ジャズ奏者が即興の深みに入るとき、音楽を「演奏している」のではなく、音楽が「流れ出ている」と語る。誰もが一度は経験したことのある、その感覚——気がついたら出来ていた、という感覚——を、西洋の創造性理論は長らく例外として扱ってきた。しかし、その例外こそが本質ではないか。創造性とは、意図によって産出されるものではなく、意図が退いたときに初めて立ち上がるものではないか。この問いを、歴史と哲学と科学の三つの角度から解きほぐしてみたい。
- NO.00018 MINNEW公開 2026.06.03戦争
「戦争はこころから生まれる」 ならば、戦争は、解ける問題だ!
戦場の映像を見て胸が痛むとき、私たちは「自分は戦争に反対だ」と感じます。その感情は本物です。しかしその感情が、実際に動員される側の人間の胸にも同じように宿っていたという事実を、私たちはどれほど真剣に考えるでしょうか。徴兵された若者も、爆撃命令を下した将校も、戦争を始めた指導者も、かつては誰かを愛し、痛みを知る「こころ」を持っていました。それでも戦争は起きました。この問いの怖さは、悪人の不在にあります。こころが善良であることと、戦争を止めることの間には、私たちが想像するより遥かに大きな溝があるのです。
RITE EXPLORE/問いの連鎖
読み切ったからこそ生まれた問いに、答えがある。
読み終わった記事の中で、もう少し深く考えたい問いが立ち上がる瞬間があります。RITE EXPLORE は、その問いを書き込むと、ミラツクの知の基盤とともに 600 字の「深掘り記事」を作成する問いの連鎖の仕組みです。書かれた問いと深掘り記事は、他の読者の問いともつながり合い、新しい問いを呼び続けます。
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