QUESTION / 元の問い
「どうすれば好奇心を掻き立てることができるような「知っている」と「知らない」の間である「少し知っている」を導くことができるのか。」
知識の縁に立ったとき、人は最も強く引き寄せられる。認知心理学者ジョージ・ローウェンスタインは1994年、論文「A Psychology of Curiosity」(Psychological Bulletin)でこの構造を「情報ギャップ理論」として定式化した。好奇心は「知っている」でも「知らない」でもなく、自分の知識に輪郭がうっすら見えているのに中身が欠けている——その亀裂の感覚から生まれる、と彼は述べた。問いを立てる前に、問いの形が先に体感される。
生命科学の文脈では、この「亀裂」は感覚的閾値の問題として現れる。神経科学者アントニオ・ダマシオは1994年の著書『デカルトの誤り』で、身体的感知が認知判断に先行することを示した。「面白い」という直感は論理評価ではなく、身体が先に不完全なパターンを検出する信号だ。植物研究者モニカ・ガリアーノは2016年、植物がシグナルの不連続を感知して応答を最適化することを報告しており(Oecologia)、「隙間への応答」が生命全般に埋め込まれた原理であることを示唆する。
日本の民俗知にも類似した構造がある。「間(ま)」という概念は、音と音の間、動きと動きの間にこそ意味が宿るとする感性論的直観だ。ローウェンスタインの情報ギャップは、西洋認知科学が遅れて発見した「間の論理」とも読める。では問いは、ここで反転する。どれだけの「隙間」が心地よく、どこから先は不安に変わるのか——その個人差と文化差を、私たちはまだ測れているだろうか。
DEEPER/学術的観点から
ローウェンスタインの情報ギャップ理論が特に示唆的なのは、「知識の量」ではなく「知識の形」が好奇心を左右するという点だ。1994年の論文では、被験者に断片的な情報を与えるほど次を知りたいという衝動が高まることが実験的に示された。この「断片開示」の原理は、科学助成の文脈では申請書の問いの立て方に直結する。問いの答えが「まだ見えていないが、問いの形は鮮明に見える」状態が最も審査者の身体を前傾させる。時間概念史の観点からは、この構造はハイデガーの「期待(Erwartung)」とも共鳴する。1927年の『存在と時間』で彼は、時間の本質を「今」ではなく「到来への開き」に置いた。好奇心はまさにその「到来の感触」を今ここで体験することかもしれない。