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NPO 法人ミラツク · RITEVol.001 / 2026.05.30 (Sat) / No.0247
問いを、記事に変える共創メディア。
Where questions become essays.
DEEP DIVE/深掘りの問いと記事

情報の隙間が好奇心を点火する

Masaki Nakasuga
2026.06.12
ORIGIN / 元記事「面白い」という直感が、研究の命運を決めているby 橋本 慧子
QUESTION / 元の問い

どうすれば好奇心を掻き立てることができるような「知っている」と「知らない」の間である「少し知っている」を導くことができるのか。

知識の縁に立ったとき、人は最も強く引き寄せられる。認知心理学者ジョージ・ローウェンスタインは1994年、論文「A Psychology of Curiosity」(Psychological Bulletin)でこの構造を「情報ギャップ理論」として定式化した。好奇心は「知っている」でも「知らない」でもなく、自分の知識に輪郭がうっすら見えているのに中身が欠けている——その亀裂の感覚から生まれる、と彼は述べた。問いを立てる前に、問いの形が先に体感される。

生命科学の文脈では、この「亀裂」は感覚的閾値の問題として現れる。神経科学者アントニオ・ダマシオは1994年の著書『デカルトの誤り』で、身体的感知が認知判断に先行することを示した。「面白い」という直感は論理評価ではなく、身体が先に不完全なパターンを検出する信号だ。植物研究者モニカ・ガリアーノは2016年、植物がシグナルの不連続を感知して応答を最適化することを報告しており(Oecologia)、「隙間への応答」が生命全般に埋め込まれた原理であることを示唆する。

日本の民俗知にも類似した構造がある。「間(ま)」という概念は、音と音の間、動きと動きの間にこそ意味が宿るとする感性論的直観だ。ローウェンスタインの情報ギャップは、西洋認知科学が遅れて発見した「間の論理」とも読める。では問いは、ここで反転する。どれだけの「隙間」が心地よく、どこから先は不安に変わるのか——その個人差と文化差を、私たちはまだ測れているだろうか。

DEEPER/学術的観点から

ローウェンスタインの情報ギャップ理論が特に示唆的なのは、「知識の量」ではなく「知識の形」が好奇心を左右するという点だ。1994年の論文では、被験者に断片的な情報を与えるほど次を知りたいという衝動が高まることが実験的に示された。この「断片開示」の原理は、科学助成の文脈では申請書の問いの立て方に直結する。問いの答えが「まだ見えていないが、問いの形は鮮明に見える」状態が最も審査者の身体を前傾させる。時間概念史の観点からは、この構造はハイデガーの「期待(Erwartung)」とも共鳴する。1927年の『存在と時間』で彼は、時間の本質を「今」ではなく「到来への開き」に置いた。好奇心はまさにその「到来の感触」を今ここで体験することかもしれない。

KEY REFERENCE/参考文献
  • George Loewenstein (1994). Psychological Bulletin 116(1): 75-98
  • Antonio Damasio (1994). Descartes' Error: Emotion, Reason, and the Human Brain. Putnam
  • Monica Gagliano et al. (2016). Oecologia 182(3): 881-892
  • Martin Heidegger (1927). Sein und Zeit. Max Niemeyer Verlag
ORIGIN / 元の記事
「面白い」という直感が、研究の命運を決めている
著者: 橋本 慧子
『脱属人化はダイバーシティを受け入れることができるのか』 イノベーションは新結合であると言われているように、既存の異なるものが結合することにより、新たなものが生まれるとされています。 そういう意味において、ダイバーシティはまさに既存の異なる人々であり、このような環境において、議論が交わされることにより、イノベーションを生み出すことができるのではないかと考えられます。 そこで、効率性を追求することにより、生産性を向上させることを優先するのか、もしくは、試行錯誤を繰り返すなど、非効率であるものの、イノベーションを生み出すことを優先するのか、ありたい未来から現在を見ることができるのかを問いたい。
脱属人化が進むほど、個人の差異は手順に回収される。しかしシュンペーター(1934年)が『経済発展の理論』で論じた「新結合」は、均質な要素の再配列ではなく、異質な知覚と経験がぶつかり合う摩擦から生まれる。ここで「1観点」として取り出すべきは「
— Masaki Nakasuga2026-06-09
TPNにおいて意識的に何をすれば、DNPにおいて豊かなノイズを導くことができるのかを問いたい。 (さらには、TPNの前で意識的に何をして、また、TPNの後で意識的に何をすれば良いのか。)
彫刻家が大理石を削るように、TPNは問題の輪郭を研ぎ澄ます。神経科学者マーカス・レイクルが2001年に『Science』で定式化したDMNの特性は、外部負荷が下がった瞬間に「内側前頭前皮質と後帯状回の自発的発火」が起きることを示す。しかし重
— Masaki Nakasuga2026-06-06
「AIが思考をはじめたその時、人間の「かく」の意味とは」 「かく」ことの目的を「思考を促す」とした場合、頭の中で思考を繰り返すだけで良いのか、言語化するのが良いのか、さらにはパソコンで言語化するのが良いのか、それとも身体性が伴う手書きで言語化するのが良いのか。
思考を「外に出す」行為の中で、手書きが他と一線を画す理由は「身体性の介在」という一点に収斂する。認知科学者アンディ・クラーク(1997年、著書『Being There』)は、脳と身体と環境が不可分に絡み合って初めて認知が成立するという「拡張
— Masaki Nakasuga2026-06-04
創造性を発揮するとは、「タスクポジティブネットワーク」において、思考を繰り返したのち、「デフォルトモードネットワーク」において、固定観念とノイズがもたらす新たな観念が二項対立し統合することであるのか」を問いたい。
創造とは、二つの神経回路が拮抗しながら融合する動態だ。タスクポジティブネットワーク(TPN/外部課題遂行時に活性化する前頭頭頂回路)とデフォルトモードネットワーク(DMN)は、通常は互いを抑制し合う拮抗関係にある。ところが2012年、神経科
— Masaki Nakasuga2026-06-02
「たまたま」と「何となく」という受動的思考・行動が自己を喪失させるのであれば、デフォルトモードネットワークにおける認知機能の低下がもたらすノイズを活用し、自己における能動的思考・行動へ転換できないのかを問いたい。
放浪する心がむしろ創造を開く——この命題を神経科学は2010年に実証した。マシュー・キリングスワースとダニエル・ギルバートが『サイエンス』に発表した経験サンプリング研究は、被験者の47%の時間に心は「今ここ」を離れていると示した。ただし彼ら
— Masaki Nakasuga2026-05-31
「『まずはやってみる』、その意思の前に、人間の根源的な衝動があるのではないのか。例えば、『幼い頃、ラジオや時計を見た時、思わず中の構造を知りたい』という衝動、『後先考えず、ラジオや時計を分解していた』という行動。表層・深層における心理のメカニズムとは。衝動が先か、行動が先か。」を問いたい。
衝動は意思より早い。神経科学者ベンジャミン・リベットが1983年に『脳と意識的経験』誌上で発表した実験は、随意運動の準備電位が被験者の「動こうとした」意識より約350ミリ秒先行することを示した。子どもが時計を分解するとき、「分解しよう」とい
— Masaki Nakasuga2026-05-31
Masaki Nakasuga
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