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NPO 法人ミラツク · RITEVol.001 / 2026.05.30 (Sat) / No.0247
問いを、記事に変える共創メディア。
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DEEP DIVE/深掘りの問いと記事

徳の蓄積がブランドを千年装置に変える

阿座上陽平株式会社Zebras and Company
2026.06.02
ORIGIN / 元記事モノの来歴が失われるとき、私たちも失われるby 松場 忠
QUESTION / 元の問い

Brand as a platform ブランドという事業が、高付加価値で一定量を使える出口を持っていて地域や一次産業という不確実性の高いものを安定的に支えるプラットフォームとしての役割について検討していきたいと思っています。 群言堂が日本の糸産業を支える。UKAという石垣島の事業者が化粧品や食品加工業として地域の農家を支える。陽と人が福島の農家を支える。 それらの行為が、ただ支援につながるということではなく、ブランドであることで価値を高め、貯めていくことができる。 また、高付加価値だからこそ、ただ買い取るのではなく高く買うことができる。 ブランドというとイメージがまた西洋的になりやすいですが、空海がどのように構造化し、『徳』を貯めて価値を高めていくシステムを千年続く装置(プラットフォーム)としてつくったのか?を考えることは両輪で考えたいです。 こういったブランドという事業の新しい可能性を模索したい。

徳という概念は、空海が平安初期(804年の入唐以降)に構造化した「加持感応」の論理と深く結びついている。行為者の意図・修行・信頼が累積することで「力」が場所や物体に宿るとする考え方は、現代の経済学が「ブランド資本(brand equity)」と呼ぶものと同型の論理を持つ。ケビン・レーン・ケラー(1993年、Journal of Marketing)がブランド資本を「消費者の記憶に蓄積された連想の束」と定義したとき、それは取引ではなく時間をかけた累積の話をしていた。空海の高野山が千二百年後も「聖地」として機能するのは、建物ではなく徳の蓄積が場所を超えて再生産されるからである。

群言堂(島根・石見銀山)、UKA(石垣島)、陽と人(福島)に共通する構造は、この蓄積の論理で読み解ける。地域の一次産業は「不確実で高コスト」だが、ブランドはその不確実性を物語と信頼に変換し、価値の貯蔵庫として機能する。農業経済学者のマイケル・ポーター(1998年、Harvard Business Review)がクラスターの競争優位を論じた際、地理的近接性よりも「知識の循環と信頼の密度」が持続性を生むと指摘した。ブランドはその信頼密度を可視化するインターフェースであり、一次産業の不確実性をリスクではなく希少性へと翻訳する装置である。

しかし問いはここから深くなる。ブランドが徳を蓄積できる条件とは何か。空海の装置が機能し続けた理由の一つは、参拝者という「使う人」が累積的に徳の生産者になる点にある。経営学者のC・K・プラハラード(2004年、Harvard Business School Press)は「価値共創(value co-creation)」として同じ構造を論じた。ブランドを支える消費者が単なる出口ではなく徳の共同生産者になるとき、プラットフォームはどのように設計されるべきなのだろうか。

DEEPER/学術的観点から

ケラーのブランド資本モデル(1993年)は、顧客ベースのブランド資本(CBBE: Customer-Based Brand Equity)を「ブランド知識が消費者の反応に与える差異的効果」と定義し、「強さ・好意性・独自性」という三層の連想が蓄積されることで価格プレミアムと需要の安定性が生まれると論じた。この枠組みで群言堂を分析すると、「石見銀山の暮らし方」という地域の物語が強さを持ち、生産者の顔が見える透明性が好意性を生み、地域固有の素材が独自性を担保している。つまりブランドが高付加価値で一次産業を高価買取できる条件は、三層の連想が地域に根ざした形で同時に成立しているときに限られる。ここに空海の「三密(身・口・意の一致)」との相同性がある。行動・言語・意図が一致するとき信頼は蓄積され、不一致が続くとき徳は急速に失われる。ブランドが「プラットフォーム」として持続するためには、この三密的一貫性を組織的に維持する仕組みの設計が不可欠である。

KEY REFERENCE/参考文献
  • Kevin Lane Keller (1993). Journal of Marketing 57(1): 1-22
  • Michael E. Porter (1998). Harvard Business Review 76(6): 77-90
  • C. K. Prahalad & Venkat Ramaswamy (2004). The Future of Competition: Co-Creating Unique Value with Customers, Harvard Business School Press
  • 空海(弘法大師) (830). 『秘密曼荼羅十住心論』巻第一(高野山大学密教文化研究所編)
ORIGIN / 元の記事
モノの来歴が失われるとき、私たちも失われる
著者: 松場 忠
阿座上陽平
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